伝統的なヨーガを科学的な研究のもとに、一般の人や疾患を持つ人でも安全に実施できるように応用したものがヨーガ・セラピー。人生の質、生活の質を高めていきます。
人生の質を向上させるためのヒントがたくさんちりばめられているヨーガ・セラピーは、単なる体操やストレッチにとどまらず、心と身体の健康について「こうありたい自分」になるための王道とも言える優れた方法で、現代社会にフィットしたストレス・マネジメント法であると言えます。
ヨーガ・セラピー(ヨーガ療法)とは
お金がたくさんあるからといって安心感で満たされるわけではありません。
贅沢な物に囲まれても、美味しい物を食べても、心が満たされるのはほんの一時のこと。
この世から旅立つ時に、この世に産まれてきた良かった、生きてきて良かったと心から思える人生、そして、周りにいるみなさんのおかげで充実した人生を送れたという感謝の気持ちを持てる、そんな生き方のヒントがヨーガの経典にたくさん書かれています。
このヨーガの経典には、人間が生きている間に体験するであろう、さまざまな心のありようや葛藤、エゴなどと、その克服方法が詳細に書かれています。そして、5000年もかけて人から人へと伝わってきたものです。いわゆる、○○式、○○流といった個人が作った方法ではなく、気の遠くなるような長い時間をかけて実証されてきた生きる智慧、つまり心と身体の上手な取扱い方が書かれているロングヒットの書物です。
この伝統のヨーガの経典を元に作られたのが、ヨーガ・セラピー(ヨーガ療法)とよばれるもので、ヨーガの体操法、呼吸法、リラクセーション法、瞑想法、ダルシャナ(心理カウンセリング)の5つの技法を使い、一人一人の不調の原因を見立てながら指導をしていきます。
例えば、一口に肩こりがある、といっても原因はさまざまです。姿勢の悪さや、眼精疲労、緊張しやすい心、がんばらないといけないという心のありよう、認めてもらいたいという欲、失敗したという記憶、できなかったらどうしようという不安や恐怖など、さまざまな要因が絡み合って、自律神経の働きが交感神経優位となり、不眠や筋肉の緊張、血行不良を引き起こし、「肩こり」という症状が発症しているとヨーガ・セラピーでは考えるのです。
ですから、肩周りの筋肉をほぐすだけではなく、緊張しやすい心のもとである思考パターン、自信が持てないという決めつけ、不安や恐怖の元となる過去の記憶など、その人の悩みのパターンを見立てて、心もほぐしていくのがヨーガ・セラピーなのです。
ヨーガ・セラピーでは、これらの絡み合った要因について、先述の5つの技法を駆使して、身体の強張りや痛み、呼吸や自律神経の乱れ、気力、感情・感覚、認知・判断、記憶、エゴなど、人間のさまざまな面からアプローチしていきますので、効果を実感していただきやすいと思います。
身体の柔らかさや、ポーズができる・できないには全くこだわらないヨーガ・セラピーは、心と身体の感覚を細部まで意識できるように練習をして、心身を上手にコントロールできるようにしていくことを目的としています。
5つの技法とは
1.体操法 : 瞑想的運動療法
筋肉に力を入れたり抜いたりすることを繰り返し行うアイソメトリック運動、呼吸と身体の動きを合わせるブリージング・エクササイズなど、意識を身体や呼吸に集中させて行います。
いわゆるマインドフルネスな状態で行うため、ヨーガ療法は、瞑想的運動療法とも言われています。筋力強化、柔軟性の向上とともに、身体に対する気づきが鋭敏となり、集中やリラックスを上手にコントロールできるようになりますので、心理面での制御力も向上していきます。参加される方の体力や柔軟性などを考慮して、筋トレや心肺機能強化を取り入れたり、椅子を使ったり、全て寝転がって行うなど、身体がかたい方や体力に不安のある方も安心して運動に集中していだだけます。
2.呼吸法 : 感情のコントロール
気分を活性化、または沈静化する呼吸法など、目的に合わせた方法があります。呼吸法では、特に自律神経のバランスが整いやすく、意識的に呼吸をすることで感情のコントロールがしやすくなります。
3.リラクセーション法 : リラックス
意識的に身体の緊張をゆるめていく方法です。心の落ち着きや頭がすっきりするなどの効果が期待できます。
4.瞑想法 : 視野を広げ、視座を高めます
ヨーガ・セラピーの神髄ともいえる瞑想法で視野を広げ、視座を高めます。マインドフルネス瞑想(気づきの瞑想)や、自己理解を深めていくヴェーダ瞑想(考える瞑想)を行います。
マインドフルネス瞑想とは
頭の中でのおしゃべりは、1日に5万回とも6万回ともいわれています。もう終わった過去のこと、未だ来ていない将来のこと、どうにもならない他人のこと、他人からの評価、不安や恐怖、自己否定などから離れて、「いま、ここ」に集中して、安定した心を手に入れていきます。
ヴェーダ瞑想とは
ストレスの元となる、自分で自分を苦しめている思い込みや決めつけに気づいていきます。自分の直した方が良いと思える性格は、他人から指摘されると受け入れられませんが、自分で気づいて自分を変えていきますので、根本から改善していき事ができるようになります。
5.ダルシャナ(心理カウンセリング)
ヨーガ・セラピー・スーリアの一番人気のレッスン、一対一でお話をうかがう個人セッションです。必要に応じて、ご夫婦、親子で承ることもあります。何に困っているのか、何にストレスを感じているのか、どうなりたいのかを一緒に探して、整理整頓していきます。本当の自分に出会って、自分を好きになって、大切にして、そして自信を持って生きて行くお手伝いをします。幸せな生き方は、とてもシンプルです。
ストレス関連疾患・心身症とは
世界保健機構(WHO)では、健康の定義を「健康とは、身体的、精神的、社会的、宗教的に良好な動的状態であり、単に病気あるいは虚弱でないことではない」としています。健康とは人間のあらゆる次元で、健やかさが実現されている状態であるということです。
こうした総合的な健康を実現することを目的としているのが、ヨーガ・セラピー(ヨーガ療法)です。現代社会において、多くの人々が絶え間ないストレスにさらされていますが、こうした環境によって起きる心身の不調和が、ストレス関連疾患である「心身症」といわれる病気をひきおこしてしまうのです。
ストレスが改善されずに慢性化していくと、心の面だけでなく、身体面での疾患に至ることがあります。下の表は、ストレスに関連していると考えられている疾患(心身症)のうち、代表的なものを示したものです。この表を見ると、普段、見たり聞いたりするさまざまな疾患がストレスに関係していることが分かります。これらの疾患の原因がすべてストレスによるわけではありませんが、ストレスが増えると症状が悪化することがあります。疾患の発症や経過にストレスが関係している場合には、病院に行って治療するとともに根本原因であるストレスの改善についても考慮する必要があります。ヨーガ・セラピー(ヨーガ療法)は、疾患の改善にとって有効な方法の1つとなります。
部位 | 主な症状 |
呼吸器系 | 気管支喘息,過喚起症候群 |
循環器系 | 本態性高血圧症,冠動脈疾患(狭心症,心筋梗塞) |
消化器系 | 胃・十二指腸潰瘍,過敏性腸症候群,潰瘍性大腸炎,心因性嘔吐 |
内分泌・代謝系 | 単純性肥満症,糖尿病 |
神経・筋肉系 | 筋収縮性頭痛,痙性斜頚,書痙 |
皮膚科領域 | 慢性蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症 |
整形外科領域 | 慢性関節リウマチ,腰痛症 |
泌尿・生殖器系 | 夜尿症,心因性インポテンス |
眼科領域 | 眼精疲労,本態性眼瞼痙攣 |
耳鼻咽喉科領域 | メニエール病 |
歯科・口腔外科領域 | 顎関節症 |
「日本心身医学会教育研修委員会編1991心身医学の新しい診療指針,心身医学,31(7),p57をもとに作成」
こんな方にオススメです
- 落ち込んだり怒ったり、イライラしたりといった「感情のコントロール」が難しい方
- 自律神経失調症やうつ、パニック障害、不安障害など、心身症の症状に「お悩み」の方
- 恵まれているはずなのに、なぜだかわからないけれど「不安」「しんどい」「苦しい」「辛い」と感じる方
- 人の目が気になる、人の顔色をうかがってしまうなど、がんばっているのに「空回り」している方
- 自分自身の感情がよくわからなくて「違和感」「モヤモヤ」する方
- 他の人と一緒にレッスンができるか不安な方
- 一般のレッスンでは、スピードが早すぎる、体力的についていけないと感じてらっしゃる方
- 病院ではどこも悪くないと診断されていても、痛みやだるさ、苦しさなど辛い症状がある方
- その他、ストレスを感じると何らかの症状が悪化してしまう方
- これまでの生き方を見直して健やかな人生を送りたい方