東広島商工会議所所報 寄稿
2015年9月号 「自己像を改革・自己成長の大切さを学ぶ」
みなさまは、人の目が気になりますか?私は、ヨーガを始める前までは、人からどう思われるかという周りからの評価を絶えず気にしていました。勉強もスポーツも仕事も、全てが人から良く思われたいという思いが基本にあり、人から馬鹿にされていないか、嫌われていないかを常に気に病んでいたのです。人からの評価だけを頼りに生きていましたので何をしても自信が持てずにいました。人の目を気にせず自分らしくありたいと思っても、他人と自分を比べることでしか自分の価値を決められなかったのです。
ヨーガの勉強をするようになってから、人生は他人に見せるものではなく自分のものだと考えられるようになってきました。「人生に台本なし 自分が作者だ。」と言うヨーガの智慧の言葉に出会ったのです。人生の一瞬一瞬の出来事を自分で選択したその結果が今の自分であり、次の運命を自らが決めているのかもしれないということに気づいたのです。
悪い出来事に動揺して怒ってしまったり、人のせいにしたりしてしまうのか、あるいは自分の内側を観察して自分を変えるチャンスだととらえるかでその後の人生、運命が変わってくるということです。気の合わない人がいたら、相手の話を聞かずに口論をしたり、話をしても無駄だと思ったりしてしまうのか、それとも相手の気持ちをわかろうとするのか。自分が尊重されていない、大切にされていないと感じたとき、気分を害して周りを批判するのか、それとも相手の真意やその人のその時の状況を理解しようとするのか。誰かにだまされた時、相手を恨み呪い続けるのか、それともそんな相手を信じてしまった自分の過ちを認めて二度と同じ間違いはしないと誓って前に進む決断をするのか。仕事が見つからない時、仕事がうまくいかない時、落ち込んで人のせいにしたままでいるのか、それとも自分を見つめ直し成長する機会と捉え問題に正面から取り組むのか。
そんな小さな選択が次の自分の運命を決めているということです。今の自分はすべて自分が選択してきた結果なのです。人生がうまくいかない時、恵まれてないと感じてしまう時、どうしても他人のせいにしたくなってしまうのは誰でも経験があると思うのです。そんな時こそ、この試練は自分に与えられたチャンスだと捉えることで、ご自身を成長させていけるのだとヨーガの智慧は教えてくれています。失敗でも辛い出来事でも、その経験をどのように生かすかは自分次第ですし、人は不愉快と感じるときにこそ、そこから多くのことを学べるのです。
ヨーガ療法がなぜ自己像を根本から改革し、能力開発につながるかというと、体操法、呼吸法、瞑想法などで心や身体を様々な角度から丁寧に観察する練習をしていくことで、自己を成長させる足かせとなっている思い込みや決めつけ、ものごとの捉え方のくせに気づき、心や身体をコントロールすることができるようになるからなのです。
東広島商工会議所所報 2015年9月号 寄稿
2015年6月号 「思い込みやこだわりは変えられる」
みなさまは、ヨーガと聞かれると単なる体操や健康維持のための運動、ストレッチと思われる方が多いと思いますが、実はヨーガはより良く生きていくための知恵を集約した体系であり(人間の取扱説明書のようなもの)、魂の科学とも言われています。特に瞑想法は、ご自身の根本的な問題にアプローチしていくため、表面上の単なるストレス解消法に比べて、ストレスを軽減する効果が格段に高く、思考を整理し効率的に物事を判断し、集中力を上げるなど能力開発に適しているのです。
ストレスで不平や不満、怒りや不安といった感情にとらわれてしまうと人生も仕事もうまく行かなくなることもあると思いますが、練習することでそういったネガティブな感情を健やかに変容させて、物事を客観的に捉え、冷静で感謝に満ちた心で生きていくことができるようになるのです。
その方法の一つがヨーガ療法で行う瞑想法です。物事の捉え方のクセは、人に言われて変えられるものではありませんが、自分でどのような思い込みや決めつけ、こだわりがあるかに気づくと自分で変えていくことができるようになるのです。他人に言われてカチンとくることがある場合、相手が悪いというよりも大抵は自分の過去の記憶や劣等感などに思い込みやこだわりがあることが多いものです。
例えば私の場合「大丈夫?」と聞かれるとイライラしてしまうことがあったのですが、いつから私の「大丈夫?」の認識がおかしくなってしまったのかを瞑想で調べていきました。記憶をさかのぼっていくと、遠い昔、私が小学4年生の時にたどり着きました。あの日、私はハチに刺されたのです。ものすごい痛みに襲われたその時、たまたま近くにいた父がわたしに「大丈夫だぁ」と声をかけたのです。単に痛みを分かって欲しかったのに反対に「大丈夫だぁ」と言われたことに無性に腹が立ち、父親に対してものすごく腹を立てたことを思い出しました。それ以来、「大丈夫?」という言葉に対して「怒り」という否定的な感情を結びつけて記憶してしまったのです。
そして、ここからが瞑想の大切なポイントです。あの時の父親の立場になって、あの場面を思い出してみます。父親にしてみると、小学生の娘が目の前でハチに刺されて痛がっていたので、子供だった私を大切に思って優しく「大丈夫だぁ」と声をかけてくれたに過ぎなかったわけです。あの状況を冷静に思い出してみると、幼かった自分の行動が子供らしくて微笑ましくなり父親に対して感謝の気持ちがわいてくるようになりました。考える瞑想で、言葉の認知間違いをしていた原因に気づき、それに結びつけていた「怒り」の感情を「感謝」の気持ちに変えることができたのです。
否定的な感情や思い込みが強いと人生にも仕事にも支障がでてしまうものですが、瞑想で様々な角度から自分を観察し認知を変えることができれば、自分の能力を開発していくことができるようになるのです。
東広島商工会議所所報 2015年6月号 寄稿